伊藤忠商事の強さが際立っている。2026年3月期決算では、純利益で9,003億円を計上し、業界トップの座を奪還した。資源価格の波に左右されがちな商社業界において、同社が安定して高い利益を叩き出せる最大の要因は、非資源分野への厚いポートフォリオにある。
非資源分野とROEが示す「稼ぐ力」
繊維、食料、住生活、情報といった生活消費に関連する非資源分野が、同社の収益を力強く下支えしている。単に規模を追うのではなく、資本効率を重視する経営姿勢は、株主資本利益率(ROE)にも色濃く反映されている。伊藤忠のROEは14%台と、総合商社の中でも屈指の高水準を維持しており、投下した資本から効率よく利益を生み出す「稼ぐ力」の高さが、投資家からの根強い支持を集める要因だ。
株式市場における評価も盤石だ。時価総額は商社業界で常に上位を争う水準にあり、市場の急変動局面においても相対的に高いボラティリティ耐性を示している。
中国市場との向き合い方──「強み」と「慎重さ」の相克
同社を語る上で避けて通れないのが中国市場との関係性だ。かつては「中国最強商社」と自任し、中国中信集団(CITIC)との大規模な提携など、現地のネットワークを武器に成長を加速させてきた。この強固な地盤は、アジア市場を攻略する上での唯一無二の資産であることは間違いない。
しかし、近年の地政学リスクの高まりや、中国不動産市場の低迷に伴う内需の減退を受け、同社の中国戦略も新たな局面を迎えている。リスクを完全に排除するのではなく、現地のパートナーとの絆を深めつつ、駐在員配置の最適化や事業ポートフォリオの精査を行うなど、かつてのような「フル・アクセル」の投資から、より強かに市場環境を見極めるフェーズへと舵を切っている。
「中国で稼ぐ」という伝統的な強みを維持しながら、いかに米中分断といった激動の国際情勢の中で成長を維持するか。非資源分野で培った「生活者目線」のビジネスモデルは、この難局を切り拓くための強力な武器となるはずだ。
※本記事は2026年6月21日時点の公開情報を基に作成しています。株式投資は価格変動リスクを伴います。売買にあたっては最新の市場環境や決算資料を確認の上、ご自身の判断で行ってください。
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