デジタル庁、政府AI「源内」導入に向けた国産LLM公募を11月に開始へ

政府AI「源内」の国産モデル調達、デジタル庁が描く「行政実装」への道筋

デジタル庁は2026年5月29日、政府の統一的な生成AI基盤である「ガバメントAI『源内』」において、2027年度から本格運用を開始する国産基盤モデルの選定プロセスを明らかにした。同年11月に公募を開始し、政府独自の厳しい評価基準をクリアしたモデルを有償で調達する。国家のデジタルインフラとして「行政特化型」の知能をいかに実装するか。その詳細な要件と背景を紐解く。

汎用から「行政実装」へ――求められる能力の質的転換

今回示された調達要件で特筆すべきは、モデルの評価手法である。従来のAIベンチマークの主流であった学術的・汎用的な推論能力の測定にとどまらず、政府職員が日常的に直面する「行政実務」の完遂能力を徹底的に試す。

デジタル庁が準備した評価テストは、全35項目、計300問に及ぶ。対象は法令・制度知識から、リスク検討、政策の論理構成まで、多岐にわたる。例えば、複雑に絡み合う法案の要約や、特定の社会課題に対する根拠ある分析など、官僚特有の業務プロセスをいかにAIがサポートできるかが試される。

この動きは、生成AIの活用が「試験的な導入」から「実務の根幹を支える社会基盤」へと移行したことを物語っている。テスト時間上限15時間という長尺の評価は、モデルの回答精度だけでなく、システムとしての安定性や行政分野特有のコンテクスト理解力という、実用上の「品質」を厳格に問う姿勢の表れと言える。

5社の先行検証がもたらす「国産モデル」の深化

現在、デジタル庁はNTTデータ、ソフトバンク、日本電気、富士通、Preferred Networksの5社と契約を締結し、「源内」内での評価検証を進めている。各社はそれぞれ「tsuzumi 2」や「PLaMo 2.0 Prime」といった独自の国産基盤モデルを投入しており、これら先行する検証結果は、来年度の入札条件に不可欠な知見として蓄積される。

この官民連携の枠組みは、単なる製品採用の場ではない。政府の機密データを扱う「機密性2」レベルのセキュリティ環境下で、国産LLMがどれほど耐えうるかという「ストレステスト」の場でもある。国内技術の競争力強化と、行政サービスの質的向上を同時に目指すという、デジタル庁の「国産育成」の意志が強く反映されている。

18万人の「官」を支えるインフラへ

「源内」の対象職員数は、2026年5月末時点で約10万人に達しており、今後は全府省庁の約18万人規模まで拡大する見通しだ。これだけの規模で生成AIを共通利用するシステムは、先進国でも例を見ない。

今後のスケジュールを俯瞰すると、11月の公募開始を経て、2027年3月に落札者が決定、4月にはガバメントクラウド上でのデプロイが完了する。このタイムラインは、政府のデジタル化に向けた「ラストワンマイル」を埋めるための野心的な計画である。

懸念材料がないわけではない。セキュリティ要件の厳格化や、急速に進化するAI技術の陳腐化速度への対応など、ハードルは決して低くない。しかし、行政実務という極めて限定的かつ高度なニーズに最適化された「国産LLM」が構築されれば、それは日本のデジタル化を加速させる強力なエンジンとなるだろう。

2026年11月、各社がいかなるモデルでこの「行政の門」を叩くのか。モデル開発企業にとっても、自社の技術力を行政という巨大なフィールドで証明する最大の機会となることは間違いない。政府と民間が一体となって取り組むこのプロジェクトの成否は、日本のDXの真価を占う試金石となる。

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この記事を書いた人

岡本晟楽はEIICHI JOURNALの編集長、代表。仮想通貨の価格分析からPR記事まで幅広い作成経験を持つ。元コインテレグラフジャパンの編集者。野村総合研究所。兵庫県神戸市出身、台湾・カナダなどの環境で学生時代を過ごす。世界的なメディアでの経験から仮想通貨に限らず政治、経済などの記事についても執筆をする。

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