これまで生前贈与の主流は暦年贈与だった。だが直近の税制改正により、相続開始前の相続税への加算期間が3年から7年へ段階的に延長された。これにより以前と比べて使い勝手が悪くなっている。
そこで新たな生前贈与の手段として注目されるのが「相続時精算課税制度」だ。親や祖父母から子供や孫へ、累計2500万円までを非課税で贈与できる。さらに2024年には年間110万円の基礎控除が新たに創設され、より利用しやすくなった。
税理士などの専門家は、相続時精算課税制度を検討する人が増えていると指摘する。高齢の贈与者にとって、暦年贈与の加算期間7年は長く感じられるようだという。実際の2024年の申告実績では同制度の利用が前年比59%増となる一方、暦年贈与は14%減少した。
孫への贈与の利点と生命保険の落とし穴
相続時精算課税制度には一度選択すると取り消せず、暦年贈与に戻れないという欠点がある。そこで有効な対策として検討されるのが、加算の影響を受けない孫への暦年贈与だ。相続発生前の贈与が相続財産に加算されるのは、相続人や遺贈を受けた人だけに限られるからだ。
そのため相続や遺贈で財産を取得していない孫への贈与は加算の対象外となる。また祖父母から孫へ直接贈与した資産は親を経由しない。そのため世代間の各段階で発生する相続税を抑制できる利点もある。
ただし孫に暦年贈与を行う場合、孫を受取人にした生命保険への加入は控えたい。生命保険は暦年贈与とは一見無関係に思える。だが、これが暦年贈与の効果を台無しにしかねないという声もある。
死亡保険金の受領によって、祖父母の財産を受け取ったと見なされてしまうからだ。その結果として過去7年分の暦年贈与も持ち戻されてしまう。相続人でない孫は生命保険の非課税枠が使えず相続税は2割加算となるため、大きな税負担が発生する可能性がある。
不動産を使った節税策の厳格化
不動産は長らく相続税対策の主軸として活用されてきた。相続財産は時価評価が原則だが、不動産は国税庁が毎年発表する路線価で評価する。路線価は時価より2割程度低く設定されている。
さらに賃貸不動産では、借地権割合や借家権割合、賃貸割合などに応じて評価額を減額できる。購入の際にローンを利用していれば債務控除も受けられる仕組みだ。結果として金融資産より相続税評価が低く抑えられるため、節税に有利とされてきた。
だが節税効果が大きかったタワーマンションの評価方法が2024年1月に見直された。これに続き2027年1月からは賃貸用不動産の取得時期による評価も厳格化される。改正後は相続発生前の5年以内に取得した物件は、取得価格の約80%で評価される。
早めの対策と小口化商品のゆくえ
この5年ルールの導入について、対策がやりづらくなるという見方に懐疑的な専門家もいる。駆け込み購入が封じられても、賃貸用不動産を活用した対策の実効性が薄れるわけではないという。5年という期間を意識し、早めに対策することも検討すべきだとしている。
また相続税対策として人気のあった不動産小口化商品も変更の対象となる。2027年1月からは購入時期に関係なく、一般的な金融商品と同じ時価を反映した評価へと切り替わる予定だ。
投資商品としてのうまみが薄れるわけではない。だが相続税の節税効果については、今後は限定的になると見られている。制度の変更点を正しく理解し、計画的な資産移転を進めることが肝要だ。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


コメント