2026年6月2日、台北にてNVIDIAの創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏がQ&Aカンファレンスを開催した。フアン氏は、AIが自律的に思考し、タスクを遂行する「エージェンティックAI」の時代の到来を宣言し、パーソナルコンピューティングの概念を根底から覆す未来像を提示した。
「道具」から「自律的なアシスタント」へ
従来のPCは、あくまで人間からの指示を待つ「道具」に過ぎなかった。しかし、フアン氏は、AIが「今何をすべきか」を順序立てて判断し、必要に応じて外部ツールを自律的に操作する「エージェンティックAI」がその常識を変えると説く。
この動きを支えるのが、AIに推論や思考をさせ、ツールやメモリーと連携させるためのアーキテクチャ「ハーネス」である。これにより、AIは単なる対話の相手から、実際の業務を完遂する実働部隊へと進化した。
新チップ「RTX Spark」とMediaTekとの提携
フアン氏は、このエージェンティックAIをエッジ(ノートPC等の端末)で快適に動作させるべく、台湾のMediaTekと共同で新チップ「RTX Spark(開発コードネーム:N1X)」を開発したと発表した。
- 技術的特長: CPUとGPUを繋ぐ独自の超高速通信技術「NVLink」を採用している。
- メリット: 従来のPCI Express接続で発生していたデータのボトルネックや電力消費を解消し、高い処理能力と省電力性を両立した。
この開発の背景には、「Windows互換の、これまでにない全く新しいコンピュータを作る」というMediaTekのリック・ツァイCEOとの合意があった。
AIエージェントのための新CPU「Vera」
フアン氏は、次世代CPU「Vera」についても言及した。従来のCPUが人間による同時並行処理(マルチコア性能)を重視していたのに対し、Veraは「エージェントが仕事をするため」の設計思想を持つ。
- 超高速処理: エージェンティックAIはナノ秒単位で動作するため、処理待ちによるデータセンターの電力ロスを避ける必要がある。
- シングルスレッド性能: Veraは過去25年間で最大級のシングルスレッド性能向上を実現しており、AIによるタスクの即時完遂を可能にする。
「R2-D2」のようにユーザーと共に成長するPC
フアン氏は、今後のPCの姿をSF映画のキャラクターに例えて表現した。ノートPCは手足のない「R2-D2」のようにユーザーの好みを学習し、ユーザーと共に成長する相棒へと進化する。
「PCは単なるツールから本当のアシスタントへと進化していく」。フアン氏の言葉通り、今後はPCだけでなく、自動運転車やロボットなど、あらゆるデバイス上でAIが自律的に稼働する世界が現実のものとなろうとしている。


コメント