かつて「マイクロストラテジー(MicroStrategy)」の社名で知られたStrategy Inc.が、重大な局面を迎えている。世界最大の企業ビットコイン保有企業として市場を牽引してきた同社だが、2026年6月中旬、株価は110ドル近辺まで急落し、年初来で約27%の下落を記録した。AI関連株が最高値を更新する中で同社株が低迷する背景には、ビットコインを巡る財務構造の「歪み」が顕在化している。
優先株の下落が突きつける「調達」の壁
同社はこれまで、優先株(STRC)の発行で得た資金をビットコイン購入に充てる独自の「Bitcoin Treasury」モデルで拡大を続けてきた。しかし、直近ではその基盤が揺らいでいる。STRCが額面割れを起こし、過去最安値水準まで下落したことで、同社は「アット・ザ・マーケット(ATM)」と呼ばれる新株発行による機動的な資金調達を事実上停止せざるを得なくなった。
市場関係者は、この調達経路の遮断が同社の今後の買い付け余力を直接的に制限すると指摘する。これまで同社は発行した証券のプレミアムを活用してビットコインを積み増してきたが、株価の低迷はこのサイクルを停止させ、財務の柔軟性を奪いつつある。
史上初の売却と「配当」の重圧
同社の財務戦略における綻びは、6月上旬のビットコイン売却にも見て取れる。同社は2022年以来初めて、優先株の配当支払いのために32BTCを売却した。その後、8日には1,550BTCを買い戻して買い姿勢を強調したが、一連の動きは同社の複雑な資本構成が、ビットコイン保有という本来の目的を圧迫し始めていることを示唆している。
年間約7億5,000万ドルから8億ドルに達する優先株の配当義務は、ビットコイン価格が軟調な局面では、さらなる売却や追加のエクイティ(株式)発行を強いる「重石」となりかねない。
市場の審判:AI相場からの「孤立」
2026年6月現在、市場の資金は半導体やAIインフラ関連銘柄に集中しており、ビットコインを直接的な収益源に変換しにくい同社に対する視線は厳しさを増している。
マイケル・セイラー氏率いる同社が描く「ビットコイン・バックド・クレジット」という壮大な実験は、ビットコイン価格が右肩上がりであることを前提に成立してきた。今、ビットコインが調整局面にある中で、同社が発行する証券が「成長エンジン」から「財務リスクの火種」へと転換したとき、投資家は同社の企業価値をどう再評価するのか。
6月18日の株価112.53ドルという水準は、強気相場を信じる株主と、財務の持続可能性を疑うショート勢による激しい攻防の現在地といえる。同社が調達経路を再び確保し、過去の輝きを取り戻せるのか。それとも高コストの財務構造がさらなる足かせとなるのか。2026年後半、Strategy Inc.は、これまでのモデルの正当性を証明する厳しい試練に直面している。
※本記事は2026年6月21日時点の公開情報を基に作成しています。株式および暗号資産投資には価格変動リスクが伴います。売買にあたっては、最新の市場環境や決算資料を確認の上、ご自身の判断で行ってください。
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