半導体製造装置大手、東京エレクトロン(TEL)の存在感が増している。回路線幅の微細化が進む最先端半導体の製造に不可欠なエッチング装置やコータ/デベロッパーで世界トップ級のシェアを誇る。同社の時価総額は2026年7月現在で約25兆円規模に達し、日本企業として屈指の時価総額を誇る巨大テック企業へと成長した。
微細化支える「プロセスの要」
半導体の性能を左右するのは、髪の毛の数千分の一という微細な回路をいかに正確に形成するかだ。TELが強みを持つ「コータ/デベロッパー」は、ウエハー上に感光材を均一に塗布し、露光後に現像する工程を担う。露光装置大手のオランダASMLの技術と並び、最先端半導体の製造ラインには欠かせない「プロセスの要」となっている。
加えて、回路を削る「エッチング装置」でも高い技術力を持つ。AI(人工知能)向け半導体の高性能化に伴い、チップを縦に積み上げる3次元構造が主流となるなか、深く正確に穴を掘る同社の装置への需要は極めて高い。
日本の製造業支える「裾野」
TELの強みは単独の技術にとどまらない。同社の供給網(サプライチェーン)は日本の製造業の裾野と深く結びついている。
装置の製造には、高度な金属加工技術やセラミックス、特殊な化学素材が不可欠だ。京セラや日本ガイシといった国内の素材・部品メーカー、あるいは精密加工を担う中小企業と緊密に連携することで、高精度な装置を安定的に製造する体制を構築している。TELが最先端の仕様を提示し、日本の部材メーカーがそれに応えるという「垂直連携」は、日本半導体産業が世界で戦うための黄金律となっている。
日米中の枠組みで成長維持
TELはグローバルな事業展開でも中国企業や米国の設計企業との関わりが深い。米国のアップルやエヌビディアが設計し、台湾のTSMCが生産を請け負う半導体エコシステムにおいて、その製造ラインを支えるTELの装置は、もはや地政学を超えた「不可欠なインフラ」といえる。
同社は2026年度からの経営計画で、研究開発費を前年度比で15%増やす方針を掲げている。生成AIの普及で半導体市場は長期的な拡大局面に入っており、TELは装置の知能化や、プロセス時間を短縮する新技術の開発を急ぐ。
成長の影に潜むリスク
一方で、懸念材料もある。米中対立による輸出規制は、中国市場での売上比率が高いTELにとって無視できないリスクだ。中国の半導体メーカーが先端装置へのアクセスを制限される中、いかに代替市場を開拓し、規制の枠組みの中で成長を維持できるかが経営陣の腕の見せ所となる。
時価総額で日本を代表する企業へと駆け上がったTEL。その成長は、日本の製造業が磨いてきた「すり合わせ技術」の結晶でもある。半導体市況の変動を受けやすいという産業特有の課題を抱えつつも、次世代半導体の鍵を握る同社の動向は、日本経済の先行きを占う重要な先行指標となりそうだ。
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