ソニーグループの半導体子会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)は、次世代イメージセンサーの開発で台湾積体電路製造(TSMC)との戦略的提携を加速させる。両社は2026年5月に基本合意書を締結し、ソニーGが過半数を出資する合弁会社の設立を視野に入れた協議を開始した。自動運転車やAI(人工知能)ロボットなどの「フィジカルAI(物理的実体を持つAI)」分野に向け、センサーが撮影データを瞬時に解析する高度な技術を確立し、世界シェア約5割を握る首位の座をより強固にする。
車載・ロボ市場へ照準
同社が描く次世代戦略の核は「知能化」にある。これまでのセンサーは、被写体を撮像して外部へデータを送る「目」の役割にとどまっていた。今後はセンサー内部にAI処理機能を統合し、物体認識や分析をリアルタイムで行う「インテリジェント・ビジョン・センサー」の普及を目指す。
特に成長を見込むのが、1台に複数のカメラを搭載する自動運転車や、自律的に動作する産業用ロボットの市場だ。SSSは2026年6月、業界最速級のフレームレートを誇るX線CMOSイメージセンサーを商品化するなど、産業計測や検査分野でも先行する。同社は「センサーの知能化により、あらゆる産業インフラの目となる」と強調する。
TSMCとの「垂直統合」で勝機
TSMCとの提携は、韓国サムスン電子などの激しい追随を振り切るための「垂直統合」的アプローチだ。微細な回路設計を得意とするSSSの設計能力と、TSMCの製造プロセス技術を融合させる。
合弁会社を通じて、熊本県合志市に新設されたソニーの工場を軸に、開発から生産までのリードタイムを大幅に短縮する狙いがある。最先端のロジック層の製造にTSMCの技術を取り入れることで、高性能センサーの安定供給体制を構築し、グローバルな顧客企業の開発要求に応える体制を整える。
グループ経営との相乗効果
一方で、グループ全体での事業ポートフォリオ最適化も進める。ソニーGの十時裕樹社長兼最高経営責任者(CEO)が掲げる「クリエイティブ・エンタテインメント」構想において、半導体事業が創出するデータはグループ全体の資産と位置づけられる。
AI技術を「クリエイターの可能性を広げるツール」と定義する同グループは、バンダイナムコホールディングスなど他社との協業も通じ、映像制作におけるAI活用を推進している。SSSが開発するセンサーは、こうした高付加価値コンテンツの生成を支える基盤技術としても機能する見通しだ。
半導体市況の変動や地政学的なサプライチェーンのリスクは依然として重い課題だが、SSSは世界トップの技術力と戦略的なパートナーシップを武器に、スマートフォンの枠を超えた「フィジカルAI時代のインフラ企業」としての地位を揺るぎないものにする構えだ。
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