半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(285A)が、日本企業の時価総額ランキングでトヨタ自動車を抜き、ついに首位の座に躍り出た。2024年12月の東証プライム上場時には公開価格を割り込むなど「船出」は冷ややかなものだったが、そこからわずか1年半で株価は60倍超に急騰。AI(人工知能)サーバー向け大容量SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)という新たな成長エンジンを捉え、世界的な半導体需給逼迫の主役として劇的な転換を遂げた。
AIが変えた収益構造
かつてメモリー業界は、市況変動の影響を受けやすい「サイクルの激しい業界」として認識されていた。しかし、生成AIの学習・推論に不可欠な大容量ストレージとして同社のNANDフラッシュメモリーやSSDの需要が爆発的に増加。2026年4~6月期の純利益見通しは前年同期比48倍の約8,690億円に達する見込みで、市場予想を大きく上回る急成長ぶりを披露している。
S&Pグローバル・レーティングも、こうした極めて堅調な業績と財務改善を背景に、同社の格付けを「BBB-」に引き上げた。同社は今や、3カ月以内にネットキャッシュ(現預金が借入金を上回る状態)を達成できる強固な財務体質への転換を目前にしている。
今後の焦点:米国市場への上場と株式分割
2026年6月下旬、同社の河村副社長は今後の経営方針として、2027年4~6月期を目途に米国市場への上場を検討していることを明らかにした。国際的な投資家層の拡大と、さらなる資金調達の柔軟性確保を目指す狙いだ。
また、急速な株価上昇により1単元あたりの投資金額が高額になっている現状を踏まえ、「適切な株式分割を検討する」との意向も示された。これにより、より幅広い個人投資家が参加しやすくなることが期待され、市場の流動性は一段と高まる公算が大きい。
6月末相場での足踏みと、今後の展望
直近の市場では、6月30日に株価が一時9万円近辺で強弱感が対立する場面もあった。四半期末に伴う機関投資家の持ち高調整売りが上値を抑えたものの、押し目では堅実な買いが入り、上昇トレンドの基調に変化はない。
かつては「負け組」と揶揄された企業が、今や日本を代表するAIインフラ企業へと進化を遂げた。NANDメモリー市場での圧倒的な技術優位性を武器に、競合他社を突き放すキオクシアの躍進。2027年の米国上場という次なるマイルストーンに向け、同社の「AIメモリー戦略」は世界市場でもいっそう重要度を増すことになりそうだ。
※本記事は2026年7月1日時点の公開情報を基に作成しています。株式投資は価格変動リスクを伴います。売買にあたっては最新の市場環境や開示資料を確認の上、ご自身の判断で行ってください。
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