米デジタル資産運用会社NYDIGのグローバルリサーチ責任者、グレッグ・シポラロ氏は、ビットコイン(BTC)および暗号資産市場全体が直面している停滞について、単一の要因では説明できない複合的な逆風が存在すると分析している。同社が整理した、市場を押し下げている5つの主要な要因は以下の通りである。
ビットコイン市場に重くのしかかる5つの逆風
- AIへの資金シフト: 過去18カ月でAI技術が株式市場やベンチャー投資の主役となり、仮想通貨市場と投資家層が重複していることから、より高いパフォーマンスを求めて資金がAI関連資産へ移動している。
- 大型IPOによる流動性圧迫: スペースX、OpenAI、アンソロピックなど、今後数四半期以内に予定される大型非公開企業のIPOに向け、機関投資家が既存の仮想通貨ポジションを削減し、参加資金を確保しようとする動きが下押し圧力となっている。
- 政府による資産差し押さえ懸念: 米財務長官がイランに関連する約10億ドル相当の仮想通貨資産を差し押さえたとする報道が、政府によるウォレット制御の可能性を示唆し、仮想通貨の根幹である「検閲耐性」に対する市場の不信感を招いている。
- ストラテジー社の売却方針転換: ビットコインの継続的な買い手であったストラテジー社が、5月末にビットコインを売却したことで、市場には将来的な追加売却への懸念が広がり、心理的な重石となっている。
- 量子コンピューティングへの警戒感: グーグルなどの研究者が暗号解読に必要なリソースの見積もりを大幅に引き下げたことで、理論上の脆弱性が現実的な脅威へと近づいているとの認識が、新たな不確実性として市場に意識されている。
オンチェーン指標が示す調整局面の現在地
NYDIGのレポートでは、現在のビットコインの調整局面を過去のサイクルと比較分析している。現在の高値からの下落率は52.7%であり、過去のサイクルにおける大幅な調整と比較すると比較的浅い水準にとどまっている。
オンチェーン指標の動向は以下の通りである。
- MVRV比率: 現在1.2倍まで低下しており、過去サイクルの底値水準に近づいている。
- 含み益保有比率(PSIP): 49%となっており、底値形成の目安とされる50%を割り込んだ。
- 損益指標: 長期保有者の損益比率(LTH-SOPR)が1.0を下回る0.95となっており、平均損益(aSOPR)もほぼ1.0の位置にある。
市場関係者の分析によれば、これらの指標は投機的な過剰ポジションの解消が進んでいることを示唆しているものの、過去の主要な底値で見られたような「完全な投げ売り」の兆候には至っていないとされる。一部のアナリストは、4.6万ドルから5.4万ドルが底値形成の可能性が高いゾーンであると指摘しており、回復には7.5万ドルから7.9万ドルの水準奪還が当面の関門になると見ている。
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