AIエージェント時代の新たな金融基盤を構想
【自民党が次世代AIとオンチェーン金融の構想を了承】
AIエージェント時代の新たな金融基盤を構想
自由民主党のデジタル社会推進本部に設置された次世代AI・オンチェーン金融構想プロジェクトチーム(PT)がまとめた提言が5月19日に自民党の政務調査審議会で了承された。同PTで座長を務める木原誠二氏や座長代理の平将明氏らが自身のXアカウントで報告した。
この提言は「次世代AI・オンチェーン金融構想」と題された。AIとブロックチェーンの技術を最大限に活用し次世代の金融インフラ整備を推進することを柱とした内容だ。AIエージェントの普及によって従来は個別に行われていた経済活動がシームレスに連結化される未来を想定している。これにより24時間365日体制で取引が自動化される未来が訪れるだという。
平氏は自身のXアカウントで「AIが判断・実行するだけでなくその前提となる取引や決済や契約や資金移動等の信頼性を担保する基盤が不可欠」とした。そしてその基盤としてブロックチェーンを活用したオンチェーン金融を官民の強固な連携のもとで推進する必要性を説明した。
また同提言ではAIエージェントによる自律的な経済活動をエージェンティック・コマース(Agentic Commerce)と定義している。この新しい時代においてブロックチェーンの持つ耐改ざん性や参照可能性やプログラマビリティがきわめて高い親和性を持つと整理した。
3メガバンク共同ステーブルコインとRWAの推進へ
具体的な施策としてはトークン化預金(TD)や円建てのステーブルコイン(SC)やRWA(現実資産)のオンチェーン化などが今後の重点領域として挙げられた。
トークン化預金については日本銀行の当座預金のトークン化への対応やホールセール型の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を含む論点整理を年内に公表するよう求めた。またステーブルコインについては給与支払いや納税などに関する法的な位置づけの整理を省庁横断の体制で進める方針が示された。
さらに同提言では3メガバンクの共同による新しいステーブルコインの発行について2027年3月までの実運用開始を念頭に検討を進めるだという。
3メガバンクによる共同ステーブルコインの構想を巡っては2025年11月に金融庁が「決済高度化プロジェクト(PIP)」の初めての支援案件として実証実験を支援すると発表した。
この実証実験には三菱UFJ銀行と三井住友銀行とみずほ銀行の3メガバンクが参加する。それに加え三菱商事や三菱UFJ信託銀行やプログマ(Progmat)も参加する。発行の方式には銀行を共同の委託者とし信託銀行を受託者とする信託型のスキームが採用された。
プログマはステーブルコイン発行などに必要な基盤や高度な技術の提供を支援する役割を担う。まずは三菱商事の日本拠点と海外拠点との間におけるクロスボーダー決済への積極的な活用が想定された。
アジア諸国との連携強化と今後のロードマップ策定
同提言ではこのほかアジア諸国との連携を目的とした「AI・オンチェーン金融アジア政策対話枠組み(仮称)」の創設も盛り込まれた。また円建てのステーブルコインを活用したクロスボーダー決済の拡大を想定する「グローバルSCコリドー構想(仮称)」もあわせて示された。
また金融庁に対しては今後5年間の具体的なロードマップの策定が求められている。加えて量子コンピューターの発展による暗号技術の危殆化リスクへの対応についても重要な課題として明記された。
今回の提言はあくまで自民党内で了承された政策提言だ。法律の直接的な改正や政府決定そのものではない。今後これらの提言内容が政府の基本方針や詳細な制度設計にどのように反映されるかが最大の焦点となる。
日本政府はこれまでも成長戦略の1部としてWeb3の推進を掲げてきた。2023年6月には改正された資金決済法が施行され世界に先駆けてステーブルコインの発行や流通に関する法的な枠組みが整備された。この画期的な法整備により国内の金融機関や事業者がステーブルコインの市場へ参入しやすい環境が整った。
今回の提言はこうしたこれまでの政策の延長線上にある。AIとブロックチェーンの技術を掛け合わせることでさらなる経済成長を目指す狙いだ。現実世界の資産をブロックチェーン上で扱うRWAの市場は世界的にも急速に拡大している。仮想通貨だけでなくこうした幅広い分野で金融インフラのデジタル化が進むことで新たな投資機会が創出される。金融システムの効率化だけでなく市場全体の活性化が期待される。


コメント