国内の大手および中堅の建設会社の約7割が今年度内に大型工事の新規受注ができない。建設業界を覆う深刻な人手不足が企業の受注余力を奪っている。契約済みの工事でも4割弱で工期が遅れる懸念が出ているという。民間投資や公共事業への制約が強まり、日本経済の成長を阻む要因となりかねない。
専門人材の枯渇と迫る労働規制の影響
調査は国内の建築工事売上高の上位71社を対象とし45社から回答を得た。会社が抱える案件の上位1割を大型工事と定義している。2026年度中に新規受注が可能と答えた企業は全体の22%にとどまった。69%の企業が受注可能な時期を2027年度以降と見込み、7%は2030年度以降になると回答している。
すぐに大型案件を受注できない最大の理由は人手不足であり、回答企業の69%がこれを挙げた。背景には2024年4月から厳格化された時間外労働の規制がある。厚生労働省の7月の調査では、労働者の過不足判断を示す指数が建設業で全産業トップの63を記録した。
特に深刻なのが電気や空調といった設備工事を担う専門技術者の確保だ。大型案件を受注できない理由として22%の企業がサブコン(設備工事会社)の不足を指摘している。清水建設の新村達也氏は「サブコンに仕事を断られることも多い」と明かした。
膨らむ未消化工事と相次ぐ再開発の見直し
国土交通省の統計によると住宅以外の建築と土木事業の停滞感が顕著になっている。建設会社が契約済みで完了していない工事の残高は直近の統計で16兆3696億円に達した。これは5年前の同時期と比較して41%増であり、10年前と比べると2.2倍の水準だ。
各社は新規受注を絞って既存工事の完遂を急ぐが、遅延は避けられない状況だ。契約済みの工事で工期遅れの可能性があるかという問いに36%の企業が懸念を示した。人手不足や建築コストの上昇を理由に、大型開発計画の中止や見直しも相次いでいる。東京都中野区の複合施設である中野サンプラザの再開発計画は白紙撤回された。
地方の中核都市でも同様の事態が起きている。JR九州は昨秋に博多駅の複合ビル建設計画の中止を発表した。名古屋鉄道も昨年末に名古屋駅周辺の再開発計画を見直すと公表している。建設費用の高騰が採算を圧迫し、計画の進行を妨げる大きな要因となっている。
デジタル化の推進と求められる政策的支援
中長期的な課題解決の道筋は依然として見えていない。2030年度までに受注予定がある未契約工事でも、33%の企業が工期遅れのリスクを認識している。さらに98%の企業が今後3年間で建設コストが上がると予想している。
国内総生産の3割近くを公共投資や民間の設備投資が占めている。建設業界の受注余力の低下は公共工事の入札不調を招いており、高市政権が掲げる積極財政による成長投資の足かせとなる。
この事態に対し各社はデジタル化で施工能力の向上を図る。大成建設は今年度中に全社員の1割強にあたる1200人が生成AIを扱える体制を整える。書類作成を自動化し、作業時間を1人あたり週5時間削減する計画だ。
芝浦工業大学の蟹沢宏剛氏は「デジタルトランスフォーメーションを進め、労働生産性を高める必要がある」と指摘した。一方で業界からは政策的支援を求める声も根強く、調査対象の24%が労働時間規制の見直しを政府に要望している。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


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