住宅着工6.1%増、4カ月連続プラス 持家・貸家・分譲がそろって増加

住宅街の建設現場とクレーン

目次

  • 住宅着工は前年同月比6.1%増
  • 持家・貸家・分譲がそろって増加
  • 年率換算では2.7%減
  • 建築費と住宅価格への影響

国土交通省が9月30日に発表した8月の建築着工統計で、新設住宅着工戸数は前年同月比6.1%増となった。 持家、貸家、分譲住宅がそろって増加し、全体では4カ月連続の前年超えとなった。 ただし、季節調整済みの年率換算値は前月比2.7%減少した。 表面的な「6.1%増」だけで住宅市場が本格回復したと判断するには、慎重さが必要である。

4カ月連続で前年を上回る

住宅着工統計は、実際に工事が始まった住宅を集計する。 住宅販売の契約数とは異なり、数カ月から数年後に市場へ供給される住宅の動きを先に確認できる指標だ。 8月は持家、貸家、分譲住宅がいずれも増加した。 特定の住宅種類だけが全体を押し上げたわけではない点は注目される。 持家は主に注文住宅、貸家は賃貸アパートやマンション、分譲住宅には分譲マンションや建売住宅が含まれる。 つまり住宅市場の複数分野で建設が増えたことになる。 住宅建設は経済への波及効果も大きい。 住宅そのものだけでなく、木材、鉄鋼、ガラス、住宅設備、家具、家電、引っ越しなど多くの産業に需要を生む。 着工が継続的に増えれば、関連企業にとっては追い風になる。

ただし年率換算は前月比2.7%減

一方、季節調整済み年率換算値は前月から2.7%減少した。 前年同月比では増えたが、直近の勢いは弱くなったことになる。 住宅統計を見る際に難しいのが、この2つの数字の違いだ。 前年同月比は1年前との比較なので、前年の水準が低ければ高い伸び率が出やすい。 季節調整値は、月によって異なる住宅着工の季節性をならして直近の動きを確認する。 したがって「6.1%増」と「2.7%減」は矛盾しない。 中長期的な流れを判断するには、数カ月分を続けて見る必要がある。 住宅購入者にとっても重要だ。 着工が一時的に増えても、供給不足がすぐ解消されるわけではない。 特にマンションは着工から完成まで長い時間が必要となる。

建築費上昇との戦い続く

住宅供給で最大の問題の1つが建築コストである。 資材価格だけでなく、建設現場の人手不足や賃金上昇も建築費を押し上げる。 土地価格の高い都市部では、建物コストの上昇を販売価格へ転嫁せざるを得ない。 その結果、住宅価格が上がる。 価格が上がれば購入できる世帯が減り、販売期間が長くなる。 販売会社は住戸面積を縮小したり、郊外へ開発地域を広げたりすることで総額を調整する。 賃貸住宅にも同じ問題がある。 建築費が上昇すれば、オーナーは高い建設費を家賃で回収する必要がある。 新築賃貸の家賃が上昇すれば、周辺の既存物件にも値上げ圧力がかかる可能性がある。 住宅着工は「住宅を買う人」だけの指標ではない。 賃貸住宅で暮らす世帯の将来の家賃にも関係する数字である。

金利上昇下で供給を維持できるか

さらに2026年は金利環境が大きく変化している。 住宅購入者だけでなく、不動産会社や住宅メーカーも銀行から資金を借りて事業を行う。 金利が上がれば、土地取得から建物完成までに必要な資金コストも上昇する。 事業採算が合わない計画は延期される可能性がある。 住宅ローン金利上昇によって購入需要が弱まれば、供給側も新規開発に慎重になる。 その意味で、8月の6.1%増が今後も続くかは重要である。 住宅供給が増えれば価格上昇を抑える方向に働く。 逆に建築費と金利上昇によって供給が減れば、需要が弱くても価格が下がりにくい市場になる。 8月の住宅着工は改善した。 しかし住宅市場が抱える「高い土地、高い建築費、高い金利」という3つの問題が解消したわけではない。 次の数カ月で着工の増加が継続するかが、2027年以降の住宅供給を考えるうえで重要になる。

翻訳・編集 EIICHI JOURNAL

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この記事を書いた人

斎藤亮二は、EIICHI JOURNALで経済分野・不動産の記事執筆を担当するライター。不動産関連資格を有し、不動産売買、投資、市場動向に関する豊富な知識を持つ。横浜市出身。不動産ジャンルを得意としながら、株式や仮想通貨にも精通しており、幅広い市場ニュースを分かりやすく発信している。

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