世界の主要都市と比較して東京のオフィス需要の逼迫が際立っている。不動産サービス大手のシービーアールイーが2026年1〜3月期のオフィス空室率を世界20都市で調査した。その結果東京の空室率は1.5%となり世界で最も低い水準を記録した。
新型コロナウイルス禍で需要が落ち込んだ2023年7〜9月期の東京の空室率は5.2%だった。当時と比較して空室率は大幅に低下しておりオフィスの高稼働が顕著だ。一方海外の主要都市はニューヨークが12.0%、ロサンゼルスが21.6%など軒並み2桁台の空室率となっている。
出社回帰と人材確保が需要を牽引
東京でオフィス需要が急速に回復した主な要因は日本企業における出社回帰の早さだ。建築設計を手がけるゲンスラーの調査では2026年時点の世界の出社率が54.8%なのに対し日本は58.8%と高い水準にある。遠隔勤務を経験したことで対面でのコミュニケーションの重要性が再認識された形だ。
具体的にはGMOインターネットグループが7月に在宅勤務の推奨を完全廃止した。フルリモート勤務を認めていたLINEヤフーも2025年春から原則として週1回または月1回の出社を求める制度に改めている。同社は今春の赤坂オフィス開設に合わせて原則週3回の出社とした。
イトーキの中野健司氏は「教育の場として研修や打ち合わせができる空間を求められることが多い」と語った。中野氏によると外資系企業ではこうした要望は少なく日本特有の傾向だという。良質なオフィス環境の整備が人材確保に直結するという考え方が広がり需要を下支えしている。
新築ビルの供給と海外市場の停滞
シービーアールイーの岩間有史氏は「新築の大規模ビルの供給により高品質の物件が登場することで需要が喚起されてきた」とみている。世界の主要都市と比べて東京のオフィスビルは平均築年数が短い傾向にある。
しかし最近は建築費の高騰や人手不足の影響が深刻化している。新築オフィス市場において供給の遅れや開発計画の中止が相次ぐ状況だ。今後高まる需要を十分に吸収しきれなくなる懸念も浮上している。
一方海外市場では需要回復の遅れによる空室率の高止まりが目立つ。ロサンゼルスではオフィス返却の動きが続きパリでも欧州経済の不透明感から企業の慎重姿勢が根強い。欧米は日本と比較して定期借家の契約期間が長く機動的なオフィス契約が難しいという事情もあると岩間氏は分析する。
AI普及がもたらす今後のオフィス市況
コロナ禍以降の働き方の変化に加えて人工知能の普及もオフィス市況を左右する重要な要素となっている。ゲンスラーの天野大地氏は「米国ではAIの拡大で生産性が高まり人員配置の見直しが進んでいる」とのべた。技術の進展がオフィス需要を冷やす要因になっているという。
米国では特に金融機関やコンサルティング会社において人員削減と同時にオフィス面積を縮小する動きがみられる。これに対して日本のAI活用は発展途上であり現時点ではオフィス需要を押し下げるほどの影響は確認されていない。
ただし天野氏は5年ほど経過すれば日本市場にも変化が現れるだろうと予測する。東京は多様な産業が集積しており本質的に空室率が低くなりやすい環境にある。今後は技術革新がもたらす市況への影響に一層の関心が集まる見通しだ。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


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