2026年5月の東京都中古マンション市場は、エリアごとの需給構造の違いが鮮明になった。買い手の厳しい選別眼が市場に影響を与えている。首都圏全体の成約1平方メートル当たり単価は807800円となり、前年同月比3.9%の下落だ。これは2020年4月以来、実に73カ月ぶりの前年割れとなる。都内のエリア別にみると、都心3区の失速が全体を押し下げている構図が浮かび上がる。
城北や多摩地区は成約価格が売出価格を上回る売り手優位にある。一方で、都心3区や城東地区では売出価格と成約価格の乖離が広がっている状態だ。
メディアはバブル崩壊と報じがちだが、実態は超高額帯の取引減少に伴う統計上の歪みという側面が強い。
都心3区は大幅下落、背景に築古シフトの影
千代田区、中央区、港区の都心3区では、5月の成約価格が1億1723万円に急落した。前年同月比で20.3%減、前月比でも15.8%減という厳しい結果だ。成約件数も198件にとどまり、5カ月連続で前年実績を下回っている。直近13カ月の成約価格は1億2000万から1億4000万円台で推移してきた。今年1月から4月も高水準を維持していただけに、5月の急落は突出した動きだといえる。
だが、この数字を額面通りに受け止めるのは早計だ。成約物件の平均築年数は25.68年となり、4月の20.60年から約5年古くなっている。これまで平均値を大きく押し上げていた2億から10億円以上の超高額な築浅タワマンの取引が細った結果だ。相対的に価格の低い築古物件の成約割合が増えたため、平均値が引き下げられた。都心3区は月間の取引件数が200件弱と少ないため、一握りの超高額物件の動向で平均価格が大きく乱高下する特徴がある。
こうした状況下で、売り手と買い手の価格認識のズレも顕著になっている。5月の売出価格は1億9705万円にのぼり、成約価格との差は約8000万円に達した。在庫件数も4553件に増え、都内6エリアで最大の増加率を示している。高値での売り出しを続ける富裕層や投資家に対し、買い手が様子見に回っている構図だ。ハイクラス層における我慢比べが在庫の増加につながっている。
実需層は6000万〜1億円が主戦場、エリア厳選続く
一方で、一般サラリーマンやパワーカップルが実需で検討する6000万円から1億円のボリュームゾーンは事情が異なる。富裕層向けの超高額帯が踊り場を迎えるなか、実需ゾーンでは依然として需給がタイトに引き締まっている。
台東区や江東区などの城東地区では、5月の成約価格が5639万円となった。前月比でわずかに下落し、成約件数も399件と2カ月連続で減少している。ここで注目すべきは専有面積の縮小傾向だ。成約物件の平均専有面積は、3月の60.04平方メートルから5月には56.41平方メートルへと縮小した。
平方メートル単価が上がりながらも、成約価格がほぼ同水準にとどまっている。これは、広めのファミリー向け物件の価格上昇を受け、買い手がよりコンパクトな物件へシフトしている結果とみられる。5月の売出価格は5930万円で、成約価格との差は約291万円と他エリアに比べて乖離は小さい。予算の上限に合わせて現実的に物件のサイズを選ぶという実需層の動きが、城東エリアの取引を底堅く支えている。
多摩地区は唯一の件数増、実需の受け皿に
八王子市や立川市などの多摩地区は、都区部とは異なる堅調な動きを見せている。5月の成約価格は3890万円となり、直近3カ月間はほぼ横ばいで安定している。都区部のように価格が大きく変動する気配はない。成約件数も367件となり、都区部5エリアがすべてマイナスとなるなか、唯一前年比プラスを維持した。
成約価格が売出価格の3833万円を上回っており、明らかな売り手優位の状況が続いている。在庫件数も3365件と5カ月連続で減少し、供給が絞られるなかでも需要が途切れていないことを示している。成約価格が売出価格を超えるのは、城北と多摩の2エリアのみだ。
成約物件の平均専有面積は67.19平方メートルと、都内6エリアで最も広い。都心エリアの同価格帯の物件と比べて、広さの面で優位に立てることが、ファミリー層を中心とした実需を引きつけている要因だろう。実需層が手が届く価格帯で広さを求める動きは完全に定着している。今回の急落劇は市場全体の崩壊ではなく、超高額帯の停滞と実需層の現実的な選別買いという二極化の表れだ。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


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