東京都心の大型再開発にあわせ、家賃が相場より2割ほど安いアフォーダブル住宅の整備が広がる見通しだ。都は周辺に同住宅を整備する事業者を評価し、複合ビルなどの容積率を緩和する。年内にも住友不動産などが進める中央区や渋谷区の再開発に初適用するという。
容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合を指す。都市機能の向上につながる公共貢献などに応じて上限を緩和する仕組みがある。大規模で柔軟な開発が可能になり不動産の収益性に直結するため、事業者と住民の双方に利点をもたらす施策だ。
相場2割引きでも残る「高家賃」の壁
一方で課題となるのが、都心部ならではの元の家賃相場の高さだ。東京カンテイによると、5月の東京23区の分譲マンション賃料は1平方メートルあたり5078円と1年前から8%上昇した。
新築や築浅物件の場合、広さが40から50平方メートルでも家賃が月額20万から30万円を超えることは珍しくない。仮に25万円の相場から2割引きに設定しても家賃は20万円となり、一般的な割安住宅のイメージとは開きがある。
超高級な新築ビル内に格安の部屋を設けることは事業者の採算上も難しく、家賃も下がりきらないのが実情だ。都心ならではの根本的なジレンマをどう克服するかが問われている。
既存物件の改修と「隔地貢献」がカギ
そこで都と事業者が打ち出したのが、既存物件の活用と「隔地貢献」という手法だ。容積率が緩和される公共貢献は従来、再開発エリア内の施設整備が一般的だった。これを離れた場所での施設整備でも評価し、ビルの容積率を上乗せする。
住友不動産は2032年度までに中央区築地で地上29階と31階建てのビル2棟を建設する。あわせて同区内で既存マンションを改修し、アフォーダブル住宅を約50戸整備する計画だ。
東急不動産も2033年度に渋谷区神南でビルを建設する一方、区内の既存マンションなどの改修を検討している。家賃相場が新築より低い既存物件や、中心部から少し外れた場所を活用することで、現実的な家賃帯への引き下げを狙う。
中間所得層の流出防ぐ狙い
この施策が主なターゲットに据えているのは、低所得者層ではなく共働きなどで職住近接を求める中間所得層の子育て世帯だ。都心部の家賃高騰により、一定の収入があるファミリー層であっても都心に住み続けるのが困難になっている。
都は大型再開発とは別にマンション向けの制度も検討中だ。2026年度中にもアフォーダブル住宅の整備戸数などに応じて容積率を緩和する新制度を導入する。さらに総額200億円超の官民ファンドを通じ、計350戸を順次供給していく。
千代田区も空き物件の改修やオフィスビルの住宅転用を促すため、事業者への費用補助を2026年度に始める。家賃高騰で都心から子育て世帯が完全に流出してしまうのを食い止めるため、官民を挙げたギリギリのつなぎとめ策が続く。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


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