今後の住宅のあり方を示す国の住生活基本計画から、広さについての目安が消えた。昨今の住宅価格高騰により、家は狭くなる傾向にある。目安がなくなったことで、これからの住まいはどう変化するのだろうか。
国土交通省は今後10年の住宅政策のあり方を示す同計画を5年に1度のペースで見直している。2026年度からの新しい計画は3月に閣議決定された。この新計画では、住宅の広さについての目安が削除されている。
目安とは、豊かな住生活の実現に必要な誘導居住面積水準と、必要不可欠な最低居住面積水準の2つを指す。広さの目安は戦後の住宅不足が解消し、住宅政策を量から質へと転換するなかで1970年から1980年代につくられた。都市部では家族4人で95平方メートルを目標にし、一人暮らしでは25平方メートルを最低面積としていた。
多様化するライフスタイルと現実の乖離
なぜ今になって広さの目安は削除されたのか。国交省の会議で計画の見直しにあたった大学教授は、ライフスタイルが多様化する中で国が一律の基準や目安を設ける時代ではないと指摘している。さらに、目安と現実の乖離もその理由だという。
現代の東京の感覚からすると、誘導目標はやや高い理想に感じる。家族4人でも都市部のマンションなら70平方メートル前後を想定する人が多いだろう。100平方メートル以上の新築マンションは数が少なく、検索サイトでも高額物件ばかりが目につく。
一方で最低面積がなくなると、狭い家に押し込まれる人が増える懸念もある。これについて前出の教授は、都心部では狭くても家賃が安いなら住みたいという層もいるとしている。国が目安を押しつければ選択肢が少なくなるため、原則的には民間市場の需要と供給に合わせて決められるべきだとの考えだ。
目安廃止に対する企業の危惧
民間企業側はこの動きをどう見ているのか。住宅検索サイトを運営する企業のシンクタンク所長は、価値観の多様化に理解を示す。ただ、突然目安がなくなることには違和感があるとしている。
広さの目安が消えれば、一定の面積確保はもう必要ではないという誤ったメッセージを民間に送るのではないかと同所長は危惧する。同社の住宅検索サイトでは、10平方メートルを下回る物件への問い合わせも多いという。
この所長は、家は寝るだけの場所にしてでも都心に住みたい人がいるのは事実で、目安の削除は狭小物件のオーナーには追い風になるとした。しかし長期的にみれば、使いにくい狭小住宅が中古市場に積み上がるリスクもあると語っている。
狭い物件で快適に暮らす工夫
民間に任せるべきか、現実と理想をどう見るのか簡単に答えは出ない。ただ、住宅価格が高騰する現状では、狭い物件や中古にしか手が届かない人は多い。そうした条件の下で楽しい暮らしを実現するヒントとして、無印良品を展開する良品計画の子会社ムジハウスの事例が挙げられる。
同社リノベーション事業の担当者は、50平方メートルでも家族3人で十分に豊かな暮らしができると説明している。50平方メートルは以前の国の目安で、4人家族が住む家の最低面積にあたる広さだ。
担当者によれば、同社ではまず家の断熱性を高め、家の中の壁や仕切りを減らしているという。仕切りがなければ廊下などを省くことができ、家の中は広々とする。断熱性が高いため、エアコン1台で家全体を快適にできる利点もある。
奥行きがありデッドスペースになりやすい押し入れをなくし、壁面収納にする工夫もこらしている。子ども部屋についても、最近は2から3畳でいいという人が多いそうだ。勉強はリビングでした方がコミュニケーション面で良いという考えも浸透しているという。
今後の住宅は40から50平米が標準化か
新しい住生活基本計画には、誘導や最低という概念はなくなった。だが単身世帯や2人世帯、夫婦と未就学児などを想定し、40平方メートル程度を上回る住宅が供給されるべきと記されている。
中古流通を念頭に、様々な形の世帯が住み継いで暮らせる住宅を増やそうという考え方だ。生活や家族の変化にあわせて住み替えも増えるだろう。これからは40から50平方メートルの住まいが標準になっていくのかもしれない。
住宅市場に詳しい別のアナリストも、住宅の快適性は広さだけでは決まらないと分析している。断熱性や日照、通風、周辺環境まで含めて検討したうえでのコスト判断になるため、目安と現実が乖離するのは必然だという。ただし、住宅を広さで語る時代が終わっても、少子化との関連性だけは考慮する必要があるとした。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


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