米国経済において、再びインフレーションへの警戒感が強まっている。米労働省が発表した8月の消費者物価指数は、前月比で0.4パーセントの上昇となった。前年同月比では3.4パーセント上昇しており、米連邦準備理事会が目標として掲げる2パーセントを依然として大きく上回る状態が続いている。エネルギーを中心とした物価上昇に加え、雇用市場も予想を上回る強さを見せており、市場では追加利上げの観測が強まった。
雇用市場の強さが景気を下支え、FRBは高金利維持へ
8月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月から16万2000人増加した。市場予想の5万6000人増を大きく上回る結果となった。失業率は4.1パーセントで横ばいを維持している。インフレを抑制するためには需要を冷やす必要がある。しかし雇用環境が底堅く推移すれば、FRBは高い政策金利をより長く維持しやすくなる。
8月の消費者物価指数では、ガソリン価格が前月比3.9パーセント上昇した。価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も、前月比で0.3パーセント上昇している。こうした状況を受け、金融市場が9月の会合で0.25ポイントの追加利上げを織り込む確率は一時91パーセントまで高まった。現在の政策金利は3.50〜3.75パーセントの範囲にある。
米長期金利が5パーセントに迫り、株式市場に影響も
インフレ懸念の再燃は米国債市場にも広範な影響を及ぼしている。米10年国債利回りは一時4.979パーセントまで急上昇した。5パーセントという水準は世界の金融市場でも強く意識される節目だ。米国債は世界の金利の基準となるため、その利回り上昇は住宅ローンや企業融資のみならず、株式市場の評価にも直接的な影響を与える。
安全性の高い国債で高い利回りを得られる環境になれば、リスク資産である株式から債券へと投資資金が移動する可能性が高まる。将来の利益成長への期待が株価に大きく反映されやすいハイテク株や成長株は、金利上昇のマイナス影響をより強く受けやすい傾向にある。
日米金利差の意識で円相場や日本株にも直接的な影響
日本にとっても米国の金利動向は決して無関係ではない。米国の金利が高止まりすれば、日米金利差を強く意識したドル買いの要因となる。一方で日本銀行にも追加利上げの観測がくすぶっており、現在の円相場は両国の金融政策の行方に大きく左右される神経質な展開が続いている。米国の強い雇用統計が発表された直後にはドルが上昇し、一時1ドル156円台をつけた。
米国の長期金利上昇は、世界的な債券売りの連鎖にも波及している。日本の10年国債利回りも一時2.97パーセントまで上昇した。金利上昇が長期化すれば、国内企業の資金調達や住宅ローンにも間接的な悪影響が及ぶ可能性がある。米国経済が強すぎれば金融引き締めが長引き、逆に弱すぎれば企業業績への懸念が高まる。米国の物価と雇用は、日本の金融市場にとっても極めて重要な判断材料だ。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


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