帝国ホテルなど主要案件に異変
東京都心部で進行する大型再開発事業を見直す動きが相次いでいる。帝国ホテルは旗艦施設である「帝国ホテル東京」(千代田区)新本館の完成時期を未定と発表した。資材価格や人件費の急激な上昇が主な要因だ。地方を中心に先行していた再開発の遅延や中止の波が都心にも波及してきた。
帝国ホテルは2031年度から2036年度にかけて本館の建て替えを予定していた。しかし隣接するタワー館の解体工事を2030年度末ごろへ先送りすることを決定した。当初は2024年度中に着手する予定だった。これに伴い本館の工事日程もまったく見通しが立たない状況だという。
金利上昇と深刻な人手不足が波及
森ビルと住友不動産が共同で進める港区六本木5丁目の再開発計画も着工が遅延している。建築費の高騰に加えて金利上昇のあおりを強く受けた形だ。2030年度としていた完成時期も後ろ倒しになる見通しだ。
森ビルの小坂雄一氏は「計画が止まったりやめたりするつもりはない」と語った。そのうえで「建築費上昇をどう消化すべきか地権者と再検討を進める環境にある」とのべている。日銀が物価上振れに対応するため政策金利を31年ぶりの高水準となる1%へ引き上げる方針を固めるなど事業環境は厳しさを増す。
西武ホールディングスも港区の「グランドプリンスホテル新高輪」の営業継続を決断した。品川駅西口地区の再開発に伴い今年度中に営業を終えて建て替える予定だった。しかし物価高騰などの影響により2028年度としてきた着工時期の再検討を迫られている。
同社の原田武夫氏は深刻な建設業界の人手不足に触れた。同氏は「具体的なスケジュールは私どもだけではなかなか決められない」と実情を明かしている。来年4月以降も当面は宿泊やレストランの営業を続ける方針だ。
地方と都心で分かれる明暗
再開発の見直しは東京だけにとどまらない。JR九州は博多駅の線路上空を利用する大規模な開発計画を中止した。名古屋鉄道も名古屋駅周辺の再開発工事で規模縮小を余儀なくされている。名古屋駅周辺のにぎわい創出は喫緊の課題だが計画には暗雲が漂う。
都心部と地方都市とで再開発の明暗が分かれる傾向も鮮明になっている。東京や大阪などの大都市圏では依然としてオフィス需要などの追い風がある。他方で建築コストの高騰に耐えきれず計画が白紙化する地方都市も少なくない。中小企業の50%近くが価格転嫁に苦戦している実態も事態の深刻さを物語る。
中東情勢のリスクと今後の懸念
先行きの見えない中東情勢の悪化も経営の重荷だ。ホルムズ海峡の開放後も原油供給の回復には時間がかかるとみられる。日本商工会議所の調査でも90%の企業が中東情勢を経営上の重しと捉えておりさらなるコスト上昇は避けられない。
大手不動産会社の担当者は「現在建築中の物件の完成が遅れることになるだろう」と懸念を示す。資材価格の高止まりや人件費の上昇が続く限り不動産開発への逆風は収まりそうにない。経団連の筒井会長が投資牽引経済の実行局面への意欲を示すなか足元の再開発停滞は日本経済への大きな足かせとなりかねない。
翻訳・編集 EIICHI JOURNAL


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